QS世界大学ランキング2027:世界トップ50
はじめに
QSの大学ランキングは主観的な評価が大きな比重を占めます。そのため、ランキングハックが比較的簡単で、今や世界中の研究者に向けた「PR・マーケティング活動」や、「留学生の頭数揃え」による国際的なブランド作りのゲームと化しています。
「ろくに勤務していない臨時講師、非常勤講師などで教員一人あたり学生数を低くする」、「現地語の専攻があるにも関わらず、サテライトキャンパスで誰でも入学可能な英語の専攻を増やして、集めた留学生と外国人講師で国際比率を上げる」、「相互に論文を引用して研究スコアを上げる(厳密には不正)」など、一部の国の大学やビジネススクールは、国をあげてこのブランド作りゲームに熱狂しています。
QSランキングが作られる時期には、特に非英語圏の大学やビジネススクールから、企業や卒業生、提携している学校へむけて「うちの大学の評価をよろしくお願いします」「卒業生のみなさん、(ランキング指標の改善に)ご協力をお願いします」と暗に示唆した営業メールも大量に出回ります。
私は某国の国立大学群の依頼を受け、その国の大学の大学ランキング改善に向けて、外部委託として関わったことがあり、確認できるだけでも、一部の大学のランキング対策は大規模であり、多額の予算がついています。
ヨーロッパ、中東、中国の大学のランキング操作は、プロのコンサル(一部はQSのコンサル)が入っており、日本の教育関係者が考えているよりも、はるかに組織化され、整備されていることに、当時は驚きました。
日本人の皆さんは、大学ランキングに過度な幻想を抱くのではなく、「教育や研究が優れている」、「レベルが高い」という意味で一義的に捉えるのでもなく、ランキングゲームで高得点を取った成績表、という程度の認識でいてください。
それを踏まえた上で、QS世界大学ランキング2027:世界トップ50をまとめていきます。
ランキング操作の必要ないアメリカ、イギリスの伝統校
マサチューセッツ工科大学(MIT)は、15年連続でQS世界大学ランキングの首位を維持しました。 インペリアル・カレッジ・ロンドンとスタンフォード大学が2位タイ、 オックスフォード大学が4位、ハーバード大学が5位と続きます。トップ層は 評価と長年の研究力に支えられ、毎年ほぼ同じ顔ぶれが並びます。
ランクイン大学数が最も多いのはアメリカで184校。次いで イギリス(93校)、中国本土(85校)と続きます。
世界トップ20(QS 2027)
QSが公式に公開している世界トップ20です。矢印は2026年版からの変動を示します。同順位の場合は順位を共有 します(例:2校が=2)。
| 順位 | 大学 | 国・地域 | 前回比 |
|---|---|---|---|
| 1 | マサチューセッツ工科大学(MIT) | アメリカ | – |
| =2 | インペリアル・カレッジ・ロンドン | イギリス | – |
| =2 | スタンフォード大学 | アメリカ | ▲ 1 |
| 4 | オックスフォード大学 | イギリス | – |
| 5 | ハーバード大学 | アメリカ | – |
| 6 | ケンブリッジ大学 | イギリス | – |
| 7 | カリフォルニア工科大学(Caltech) | アメリカ | ▲ 3 |
| =8 | チューリッヒ工科大学(ETH Zürich) | スイス | ▼ 1 |
| =8 | ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL) | イギリス | ▲ 1 |
| 10 | シンガポール国立大学(NUS) | シンガポール | ▼ 2 |
| 11 | 香港大学(HKU) | 香港 | – |
| 12 | 南洋理工大学(NTU) | シンガポール | – |
| 13 | 北京大学 | 中国本土 | ▲ 1 |
| 14 | 清華大学 | 中国本土 | ▲ 3 |
| 15 | ペンシルベニア大学 | アメリカ | – |
| =16 | コーネル大学 | アメリカ | – |
| =16 | イェール大学 | アメリカ | ▲ 5 |
| 18 | 香港中文大学(CUHK) | 香港 | ▲ 14 |
| 19 | ニューサウスウェールズ大学(UNSW) | オーストラリア | ▲ 1 |
| =20 | ジョンズ・ホプキンス大学 | アメリカ | ▲ 4 |
| =20 | カリフォルニア大学バークレー校(UC Berkeley) | アメリカ | ▼ 3 |
出典:QS世界大学ランキング2027、qs.com(2026年6月18日公開)。
トップ層を動かした5つの変化
▲ 14ランクアップ
CUHKがトップ20入り
香港中文大学が32位から18位へ躍進。トップ20大学の中で最大の上げ幅で、香港全体の躍進を象徴する結果です。多額の費用を使い、国策として大学ランキングの操作をする中国では、北京、清華、香港大の影に隠れがちですが、香港中文大学は、2027年度版の中国のランキングハックの最も大きな成果の一つといえます。知人が卒業生で、しばらく大学の寮に滞在したこともありますが、良い大学でした。
▲ 5ランクアップ
イェールがエリート圏に復帰
イェール大学が=16位でトップ20に再浮上。今サイクルで巻き返した米私立大学の一つです。イェールは、「今後、US Newsのランキングへのデータ提出を一切拒否する(離脱する)」と発表して話題になった大学の一つで、QSランキングのハックにも無関心です。他のアメリカの伝統校と同じく、いや、それ以上にイェールはただ自力でランキング入りする大学です。
▲ 3ランクアップ
Caltechは2023年以来の高順位
カリフォルニア工科大学が7位に上昇。過去4年で最も高い順位となりました。QSランキング指標と非常に相性がいい大学で、QSではやたらと数字が良いのが特徴です。
▲ 4ランクアップ
ジョンズ・ホプキンスがトップ20に復帰
ジョンズ・ホプキンス大学が=20位で再ランクイン。UCバークレーと同順位です。
▲ 3ランクアップ
清華大学がさらに上昇
清華大学が14位へ。北京大学は1つ上の13位で、中国本土の首位を維持しています。国をあげてランキングハックしなくても、元々、理系で優れた研究をしているのが清華大学です。トップクラスの研究大学に、中国共産党が、教育界、産業界への命令、多額の資金を使って、ランキングの底上げをした努力が功を奏しています。
21〜50位のゾーン
トップ20より下は競争が一段と激しく、変動も大きくなります。QSは全大学の完全な順位を公式の結果テーブルで公開しています。以下は、QS自身の発表および各大学の公式発表で確認できた21〜50位の主な順位です。
| 順位 | 大学 | 国・地域 | 前回比 |
|---|---|---|---|
| =22 | ローザンヌ工科大学(EPFL) | スイス | – |
| =22 | メルボルン大学 | オーストラリア | ▼ 3 |
| 25 | ミュンヘン工科大学(TUM) | ドイツ | ▼ 3 |
| 29 | オーストラリア国立大学(ANU) | オーストラリア | ▲ 3 |
| 30 | マギル大学 | カナダ | ▼ 3 |
| 34 | ユニバーシティPSL(パリ科学・人文学大学) | フランス | ▼ 6 |
| 43 | パリ工科大学(Institut Polytechnique de Paris) | フランス | ▼ 2 |
この表について。QSは21〜50位(および1〜1,504位の全順位)を、無料公開ページ (トップ20まで表示)ではなく、公式のダウンロード版結果テーブルで公開しています。
上記は、公開当日に QSおよび各大学が確認した順位のみを掲載しています。完全な順位は、出典に記載のQS公式2027年結果テーブルを ご覧ください。
各国・地域の状況
2027年版は、世界の高等教育で起きている地殻変動をはっきりと示しています。伝統的な欧米のシステムは頂点を 守りつつも中位帯で地盤を失い、新興のシステムが着実に前進しています。
| 国・地域 | ランクイン数 | 国内首位(2027) | 傾向 |
|---|---|---|---|
| アメリカ | 184 | MIT(1位) | 世界をリードするが、36校が20位以上ダウン |
| イギリス | 93 | インペリアル・カレッジ・ロンドン(=2位) | 過去最高が5校の一方、多くが後退。15校が20位以上ダウン |
| 中国本土 | 85 | 北京大学(13位) | 最速の上昇 — 29校が20位以上アップ、新規ランクインも最多 |
| 香港 | — | 香港大学(11位) | アジア最大の改善。CUHKがHKUに続きトップ20入り |
| シンガポール | — | シンガポール国立大学(10位) | NUS・NTUともに世界トップ12内 |
| オーストラリア | — | UNSW(19位) | UNSWが史上初の国内首位、メルボルン大学(=22位)を上回る |
| カナダ | — | マギル大学(30位) | 逆風 — 約3分の2の大学が後退 |
| スイス | 11 | チューリッヒ工科大学(8位) | 大陸ヨーロッパの首位。3校が世界トップ100入り |
| ドイツ | 60 | ミュンヘン工科大学(25位) | EU最多のランクイン。4校が世界トップ100入り |
| インド | 52 | IITデリー(118位) | 過去最多。IITデリーは国内史上最高タイ |
出典:QSのグローバル/ドイツ/スイス/フランス各プレスリリース(2027年版)。
QSランキングの算出方法
各大学は、5つの評価領域(レンズ)にまとめられた9つの加重指標で採点されます。評価と研究の比重が最も大きいものの、就職力(企業からの評価)・教育体制・国際性・持続可能性も評価対象に含まれます。
就職力・教育体制・国際性は、恣意的な操作の余地が大きい項目です。
| 評価領域(レンズ) | 指標 | 配点 |
|---|---|---|
| 研究・発見 (50%) | 学術評価(Academic Reputation) | 30% |
| 論文被引用数(Citations per Faculty) | 20% | |
| 就職力・成果 (20%) | 雇用者評価(Employer Reputation) | 15% |
| 就職アウトカム(Employment Outcomes) | 5% | |
| 学習環境 (10%) | 教員一人あたり学生数(Faculty–Student Ratio) | 10% |
| 国際性 (15%) | 国際教員比率(International Faculty) | 5% |
| 国際研究ネットワーク(Intl Research Network) | 5% | |
| 留学生比率(International Student Ratio) | 5% | |
| 持続可能性 (5%) | サステナビリティ(Sustainability) | 5% |
出典:QS世界大学ランキング 方法論、topuniversities.com。(留学生の多様性は集計のみで、現状は配点なし。)
出典・注記
上記の数値はすべて、2026年6月18日に公開されたQS世界大学ランキング2027に基づきます。
主な出典: qs.com の公式結果・分析、 topuniversities.com の全順位・方法論、 QS公式の 2027年結果テーブル(スプレッドシート)、 および公開当日のQS・各大学のプレスリリース。QSは公開後に小規模な修正を行う場合があるので、その点は注意。
日本の大学を含む全順位も、QS公式の結果テーブルで確認できます。
ランキングハックのニュースをほぼ聞かない日本は、おそらく正攻法で大学ランキングを上げようとしているものと思いますが(それが正解)、アジア、中東、欧州の大学がハックでランキング指標の操作に熱中している現実と、英語圏の伝統校がランキングから距離を置き始める現実を見て、それで日本人はランキングに拘泥するのか、政府の対応も含めて興味深く見守りたいところです。